▸ この記事のポイント
- 子宮筋腫は30〜40代女性の20〜30%にみられる良性腫瘍。悪性(肉腫)への変化は非常にまれ
- 症状の有無は筋腫の位置と大きさに左右される。小さくても粘膜下にあると症状が強い
- 「様子を見る」か「治療する」かは、症状の強さ・大きさ・妊娠希望・年齢によって判断する
- 閉経後は自然に縮小することが多いため、閉経が近い場合は経過観察を選ぶこともある
子宮筋腫の種類——位置で症状が変わる
子宮筋腫は子宮の筋肉(平滑筋)から生じる良性腫瘍だ。女性ホルモン(エストロゲン)依存性のため、生殖年齢に多く、閉経後は縮小することが多い。
筋腫は発生する場所によって3つに分類される。
| 種類 | 位置 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 粘膜下筋腫 | 子宮内腔に突出 | 過多月経・不妊・流産繰り返し。小さくても症状が強い |
| 筋層内筋腫 | 子宮筋層の中 | 最も多い。大きくなると過多月経・腹部膨満・頻尿 |
| 漿膜下筋腫 | 子宮外側に突出 | 大きくなるまで症状が出にくい。腹部の圧迫感・腰痛 |
主な症状と受診のサイン
子宮筋腫の約50%は無症状で、超音波検査で偶然発見されることも多い。症状が出る場合の主なものは以下の通りだ。
- 過多月経(ナプキン交換が頻繁、血の塊が出る)
- 月経期間が長くなる(8日以上)
- 鉄欠乏性貧血による倦怠感・息切れ
- 下腹部の圧迫感・腹部の膨らみ
- 頻尿・便秘(筋腫が膀胱・腸を圧迫する)
- 不妊・流産(粘膜下筋腫の場合)
「子宮筋腫はがんにならない」は基本的に正しいが、子宮肉腫(悪性)と見分けることが重要だ。急速に大きくなる・閉経後も縮まないなどの場合は精密検査が必要。ただし超音波・MRIだけでは確定診断できないため、専門医への相談を勧める。
治療の選択肢
経過観察
無症状または軽症で、筋腫が小さい場合は定期的な超音波検査で経過を見る。閉経が近い場合は、閉経まで待つことも選択肢の一つだ。
薬物療法
- GnRHアゴニスト:筋腫を一時的に縮小させる。手術前の準備や閉経誘導に使用。長期使用は骨密度低下のため通常6か月まで
- リュープロレリン配合錠(relugolix):経口GnRHアンタゴニスト。保険適用。骨密度低下を抑えるためAdd-backホルモン療法と併用
- 低用量ピル・ミレーナ:筋腫そのものを縮小はしないが、出血量を減らし貧血を改善する
手術療法
| 手術 | 適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 子宮鏡下筋腫切除術 | 粘膜下筋腫 | 膣から器具を入れる。子宮を温存。日帰り〜短期入院 |
| 腹腔鏡下筋腫核出術 | 妊娠希望のある筋層内・漿膜下筋腫 | 子宮温存。再発率は20〜30% |
| 開腹筋腫核出術 | 大きな・多発性筋腫で妊娠希望あり | 最も確実に筋腫を取り除ける |
| 子宮全摘術 | 妊娠希望なし、重症・再発例 | 根治的。腹腔鏡下または開腹で行う |
| 子宮動脈塞栓術(UAE) | 手術リスクが高い、子宮を残したい | カテーテルで筋腫への血流を遮断 |
妊娠希望がある場合の注意
妊娠希望がある場合は子宮を温存する治療を選ぶ。ただし筋腫核出術後は一定期間(通常1年程度)の避妊が必要になる。また大きな筋腫は胎盤の位置や早産のリスクにも影響するため、妊娠前に担当医と十分相談することが重要だ。
まとめ
子宮筋腫は「発見したら即手術」ではない。症状・大きさ・妊娠希望・年齢を総合して治療方針を決める。定期的な超音波検査で経過を確認しながら、症状に応じて適切な治療を選択することが大切だ。「発見されたが何もしなくていいと言われた」場合でも、年1回程度の経過観察は継続してほしい。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
- Stewart EA. “Uterine fibroids.” N Engl J Med. 2015.
- 子宮筋腫・子宮腺筋症の治療ガイドライン. 日本婦人科腫瘍学会.