PMS・PMDD

PMDDの薬物療法——SSRI・ピルの使い分け

▸ この記事のポイント

  • PMDDの薬物療法は主に3つ:SSRI(抗うつ薬)・低用量ピル(ヤーズ系)・GnRHアゴニスト
  • SSRIはPMDDの精神症状(イライラ・気分の落ち込み・不安)に最も強いエビデンスがある第一選択薬
  • SSRIは黄体期のみの「間欠投与」が可能で、毎日飲む必要がない場合がある
  • 漢方・サプリで効果不十分なPMDDは、精神症状が主なためSSRIの適応を積極的に考える

PMDD治療の特殊性

PMDDは月経周期と連動した気分障害だ。ホルモン変化(特に黄体期のプロゲステロン・エストロゲンの急変動)が脳内セロトニン系に影響することで引き起こされると考えられている。

このため、治療は「ホルモン変動を抑える」か「セロトニン系を直接補う」の2方向からアプローチする。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRIはPMDDに対して最もエビデンスが強い治療薬だ。フルオキセチン・パロキセチン・エスシタロプラムなどが使われる。

投与方法 内容 適応
間欠投与(黄体期のみ) 排卵後から月経開始まで(通常14日間)のみ服用 症状が黄体期に限定される場合。副作用軽減
連続投与(毎日) 毎日服用する通常の方法 症状が持続的・重症の場合

SSRIの間欠投与はPMDDに特有の投与方法だ。うつ病では数週間かかるSSRIの効果が、PMDDでは数日以内に現れる。これはセロトニン系への直接作用と、月経周期に伴う脳の可塑性変化によると考えられている。

低用量ピル(ヤーズ系)

ドロスピレノン含有低用量ピル(ヤーズ配合錠・ヤーズフレックス配合錠)はPMDD治療薬として日本でも保険適用を取得している。

ホルモン変動を平坦化することで精神症状・身体症状を同時に改善する。SSRIで改善が不十分な場合や、月経痛・過多月経を同時に改善したい場合に特に有用だ。

GnRHアゴニスト(重症例)

重症PMDDで他の治療が効かない場合に、GnRHアゴニスト(点鼻薬・注射)で一時的な閉経状態を作ることがある。ホットフラッシュ・骨密度低下などの副作用があり、通常は6か月以内の短期使用だ。

認知行動療法(CBT)との組み合わせ

PMDDには薬物療法と並行して、認知行動療法(CBT)が有効とされている。症状への反応パターンを変えるスキルを身につけることで、薬物療法との相乗効果が得られる。PMDDに対応している心療内科・精神科でCBTを受けることが可能だ。

まとめ——治療の流れ

セルフケア→漢方・サプリ→ピル→SSRI→GnRHアゴニストの順でステップアップするのが一般的だが、症状が重症・精神症状が中心の場合はSSRIを早期から使うことが重要だ。「薬を飲むことへの抵抗」より、「毎月繰り返す苦しみ」を優先して治療を受けてほしい。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
  2. Steiner M, et al. “Fluoxetine in the treatment of premenstrual dysphoria.” N Engl J Med. 1995.
  3. Marjoribanks J, et al. “Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome.” Cochrane Database Syst Rev. 2013.

本記事は産婦人科専門医が監修した健康情報です。個々の医療判断は担当医師にご相談ください。本記事の内容は医療行為の代替となるものではありません。