▸ この記事のポイント
- 更年期の体重増加の原因はエストロゲン低下+加齢による基礎代謝の低下と脂肪分布の変化
- 皮下脂肪から内臓脂肪型に変化することで、糖尿病・心疾患リスクが上昇する
- 「食事量は変えていないのに太った」は更年期あるある。「同じ量で太るなら少し減らす・運動量を増やす」対策が必要
- 急激なダイエットは骨密度低下・筋肉量減少のリスクがあるため、ゆっくりとした体重管理が推奨される
なぜ更年期に太るのか——メカニズム
更年期の体重増加は「意志が弱い」からではない。ホルモン変化と加齢による生理的なメカニズムがある。
① エストロゲン低下による脂肪分布の変化
エストロゲンには脂肪を皮下(おしり・太もも)に蓄える働きがある。閉経後にエストロゲンが低下すると、脂肪の蓄積部位が皮下から内臓(お腹まわり)に変化する。内臓脂肪はメタボリックシンドローム・糖尿病・心疾患のリスクを高める。
② 基礎代謝の低下
40〜50代にかけて筋肉量が低下し(サルコペニア)、基礎代謝が年間約1〜2%減少する。「以前と同じ食事量なのに太る」のはこのためだ。1日の消費カロリーが減る一方で食事量が変わらなければ、エネルギー余剰が蓄積する。
③ 睡眠障害・ストレスによる食欲増加
更年期の不眠や精神的ストレスにより、食欲を増進させるグレリンが上昇し、満腹感を高めるレプチンが低下する。ストレス過食・夜食が増えることで体重が増加しやすくなる。
更年期のメタボリックシンドロームのリスク
閉経後は心血管疾患リスクが急激に上昇する。その一因が内臓脂肪型肥満だ。以下のリスク因子が重なるほど心筋梗塞・脳卒中のリスクが高まる。
- ウエスト周囲径 85cm以上(女性)
- 中性脂肪 150mg/dL以上
- HDLコレステロール 40mg/dL未満
- 収縮期血圧 130mmHg以上または拡張期血圧 85mmHg以上
- 空腹時血糖 110mg/dL以上
閉経前は心疾患リスクが男性より低いが、閉経後は急速に男性並みになる。エストロゲンには血管を保護する働きがあるため、その喪失が動脈硬化を促進する。これが更年期以降の血圧・コレステロール管理が重要になる理由だ。
体重管理の具体的な方法
食事の見直し
- 総カロリーを少し控える(急激な制限はNG)。1日100〜200kcal程度の削減が現実的
- たんぱく質を意識して摂る(筋肉量維持のため)。目安は体重×1.0〜1.2g/日
- 精製糖質(白米・白パン・砂糖)を減らし、食物繊維・野菜を増やす
- アルコールを控える(カロリーが高く、内臓脂肪増加と関連)
- 朝食を抜かない(基礎代謝を維持するため)
運動の取り入れ方
- 有酸素運動(ウォーキング・水泳・自転車):週150分以上を目標に
- 筋力トレーニング:週2〜3回。基礎代謝を上げるために特に重要
- NEAT(日常生活での活動量)を増やす:階段利用・こまめに歩くなど
- 座りっぱなしを避ける:30分ごとに立ち上がる
急激なダイエットは逆効果
更年期に急激なカロリー制限を行うと、筋肉量が減り基礎代謝がさらに低下する悪循環に陥る。また骨密度低下のリスクもある。目標は月0.5〜1kgの緩やかな減量。「細く見せる」より「筋肉量を維持しながら体組成を変える」ことを目標にしてほしい。
まとめ
更年期の体重増加は生理的なメカニズムがあり、「努力が足りない」ではない。しかし放置すると内臓脂肪型肥満・メタボリックシンドロームが進行し、将来の心疾患・糖尿病リスクになる。食事の質・運動習慣を今から少しずつ変えることが、老後の健康に直結する。
参考文献
- 日本女性医学学会. 女性医学ガイドブック 更年期医療編2019.
- Lovejoy JC, et al. “Increased visceral fat and decreased energy expenditure during the menopausal transition.” Int J Obes. 2008.
- Tchernof A, et al. “Menopause, central body fatness, and insulin resistance.” Ann N Y Acad Sci. 2000.