更年期

更年期症状の全体像——ホットフラッシュ・不眠・気分の波

▸ この記事のポイント

  • 更年期は閉経前後5年間(45〜55歳ごろ)を指し、エストロゲンの急減によって多彩な症状が出る
  • ホットフラッシュ(突然の顔面紅潮・発汗)は最も代表的な症状。自律神経系への影響で起きる
  • 症状は身体症状・精神症状・泌尿生殖器症状の3つに大別される。「不調の原因が更年期とは思わなかった」ケースが多い
  • 日常生活に支障が出る場合は婦人科でHRT(ホルモン補充療法)や漢方を相談できる

更年期とは——いつからいつまで

更年期とは、卵巣機能が低下し閉経へと移行する時期を指す。一般的に閉経前後の5年間(計10年間)、日本人女性では45〜55歳ごろがこれにあたる。日本人の平均閉経年齢は約50〜51歳だ。

この時期にエストロゲン(卵巣ホルモン)が急激に低下し、視床下部・自律神経・脳などへの影響を通じて様々な症状が現れる。これを更年期症状という。症状の種類・強さには非常に大きな個人差がある。

更年期症状の3グループ

① 身体症状(自律神経系)

症状 説明
ホットフラッシュ 突然の顔・上半身の熱感・発汗。数分続いて治まる。夜間は「寝汗」として現れる
動悸・息切れ 突然の心拍増加感。心臓疾患との鑑別が必要な場合も
頭痛・めまい 緊張型頭痛・片頭痛の増悪。ふらつき感
疲労感・倦怠感 「いつもより疲れやすい」「体が重い」と感じる
関節痛・筋肉痛 手指・膝・肩の痛みや腫れ。エストロゲン低下が関節への影響を持つ

② 精神症状

  • 気分の落ち込み・抑うつ感
  • イライラ・不安感
  • 不眠(寝つきが悪い・途中で目が覚める)
  • 集中力・記憶力の低下(「もの忘れが増えた」)
  • 無気力・意欲の低下

③ 泌尿生殖器症状(GSM:閉経関連泌尿生殖器症候群)

  • 膣の乾燥・萎縮→性交痛・出血
  • 頻尿・尿漏れ(腹圧性尿失禁)
  • 繰り返す膀胱炎
  • 外陰部のかゆみ・不快感

「なんとなく不調」が続く場合、更年期が原因かもしれない。特に精神症状(うつ・不眠・不安)や関節痛は、更年期と気づかれにくい。45〜55歳で多彩な不調が重なるなら、婦人科でホルモン検査を受けてみることを勧める。

更年期指数(SMI)——自分の症状を評価する

更年期症状の重症度を自己評価するためのツールとして「SMI(Simplified Menopausal Index)」がある。

10項目の症状(顔がほてる、汗をかきやすい、腰や手足が冷える、息切れ・動悸がする、眠れないことが多い、怒りやすい、くよくよしたり憂鬱になる、頭痛・めまい・吐き気、疲れやすい、皮膚の感覚異常)を「強い・中等度・弱い・なし」で評価し、合計スコアで重症度を判定する。

スコアの目安

0〜25点:異常なし / 26〜50点:食事・運動などに注意 / 51〜65点:更年期外来での治療が必要 / 66〜80点:長期的な治療が必要 / 81〜100点:専門的な長期治療・生活指導が必要

このツールはあくまで参考で、スコアが高くても低くても気になる症状があれば受診してほしい。

対処法の選択肢

更年期症状の治療は症状の種類・重症度によって異なる。

  • HRT(ホルモン補充療法):エストロゲンを補充する。ホットフラッシュ・不眠・GSMに最も効果的
  • 漢方薬:加味逍遥散(気分の不安定・イライラ)、当帰芍薬散(冷え・むくみ)、桂枝茯苓丸(のぼせ・肩こり)など
  • 生活習慣改善:規則正しい睡眠・有酸素運動・禁煙・大豆イソフラボンの摂取
  • 精神科・心療内科:うつ症状が強い場合はSSRI・SNRIも選択肢

まとめ

更年期は病気ではなく、女性のライフステージの一部だ。しかし症状によっては日常生活・仕事・人間関係に大きく影響する。「我慢するもの」と思わずに、婦人科に相談してほしい。適切な治療でQOLを保ちながらこの時期を乗り越えることができる。

参考文献

  1. 日本女性医学学会. 女性医学ガイドブック 更年期医療編2019.
  2. The NAMS 2022 Hormone Therapy Position Statement. Menopause. 2022.
  3. Avis NE, et al. “Duration of menopausal vasomotor symptoms over the menopause transition.” JAMA Intern Med. 2015.

本記事は産婦人科専門医が監修した健康情報です。個々の医療判断は担当医師にご相談ください。本記事の内容は医療行為の代替となるものではありません。