▸ この記事のポイント
- 閉経後はエストロゲン低下により骨密度が急速に下がる。閉経後5〜10年間の骨量減少が最も急激
- 骨粗鬆症は「沈黙の病気」——骨折するまで自覚症状がない。定期的な骨密度検査が重要
- カルシウム・ビタミンD・適度な運動が予防の基本。効果が不十分な場合は薬物療法
- 大腿骨近位部骨折は寝たきりの主要原因。「骨折しないこと」が将来の自立した生活を守る
なぜ更年期後に骨が弱くなるのか
骨は常に「骨吸収(古い骨を溶かす)」と「骨形成(新しい骨を作る)」のバランスで維持されている。エストロゲンにはこのバランスを保つ働きがあるが、閉経後にエストロゲンが低下すると骨吸収が骨形成を上回り、骨密度が低下し始める。
骨量は20〜30代にピークを迎え、その後徐々に低下する。特に閉経後5〜10年間は急速な骨量減少期で、この時期に年間約2〜3%の骨密度が失われることがある。
日本人女性の3人に1人は生涯に骨粗鬆症骨折を経験する。特に大腿骨近位部(股関節)骨折は、骨折後1年以内の死亡率が約20%という深刻な疾患だ。「転んで骨折する前に予防する」ことが最も重要だ。
骨密度検査——いつ・どこで受けるか
骨密度検査は骨粗鬆症の診断・治療効果の確認に使われる。
| 検査法 | 特徴 | 推奨タイミング |
|---|---|---|
| DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法) | 最も標準的・正確。腰椎と大腿骨を測定 | 閉経後は2年ごとを目安に |
| 超音波法 | 放射線被曝なし。検診での簡易測定 | 一次スクリーニングとして |
骨密度の結果はT-スコアで表し、若年成人の平均を100%としたときの割合で示される。T-スコア -1.0以上:正常 / -1.0〜-2.5:骨減少症 / -2.5以下:骨粗鬆症 と分類される。
食事と生活習慣による予防
カルシウム
推奨摂取量は閉経後女性で700〜800mg/日。食事から摂るのが基本で、乳製品・小魚・豆腐・緑黄色野菜などが多く含む食品だ。食事だけでは不足する場合はサプリメントで補う(ただし1000mg/日を超える過剰摂取は腎結石リスクがある)。
ビタミンD
カルシウムの腸管吸収を高める。日光(紫外線)によって皮膚でも合成される。日本人の多くはビタミンD不足傾向にある。食事(魚・きのこ)+適度な日光浴(1日15〜30分)+必要に応じてサプリメント(800〜1000IU/日)が推奨される。
運動
骨への物理的刺激が骨形成を促進する。ウォーキング・軽いジョギング・筋力トレーニングが特に有効だ。水泳は心肺機能には良いが骨への刺激が少ないため、骨密度改善の目的には他の運動との組み合わせが望ましい。
薬物療法
骨粗鬆症と診断された場合、または骨折リスクが高い場合は薬物療法が検討される。
- ビスフォスフォネート系薬(アレンドロン酸など):骨吸収を抑制。最も広く使われる。週1回または月1回の内服
- SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬:ラロキシフェン):骨には女性ホルモン様に作用。乳がん・子宮への影響が少ない
- HRT(ホルモン補充療法):更年期症状の治療と骨粗鬆症予防を兼ねる
- デノスマブ(プラリア)注射:6か月に1回の皮下注射。骨吸収を強力に抑制
- テリパラチド(フォルテオ)注射:骨形成を促進する唯一の薬。重症例に
まとめ
骨粗鬆症は閉経後の女性が避けにくい健康課題だが、適切な対策で骨折リスクを大幅に下げることができる。まずは「骨密度検査を受けること」から始めてほしい。自分の骨の状態を知ることが予防の第一歩だ。
参考文献
- 日本骨粗鬆症学会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.
- 日本女性医学学会. 女性医学ガイドブック 更年期医療編2019.
- Kanis JA, et al. “Assessment of fracture risk and its application to screening for postmenopausal osteoporosis.” WHO Technical Report Series. 1994.