▸ この記事のポイント
- おりもの(帯下)は膣を清潔に保つ正常な分泌物。色・量・におい・かゆみの変化が異常のサイン
- カンジダ膣炎:白く酒粕状のおりもの+強いかゆみ。再発しやすい
- 細菌性膣症:灰色〜白色で魚臭いおりもの。膣内の善玉菌(乳酸菌)の減少が原因
- 膣の洗いすぎ(ビデの過剰使用)は逆に膣内環境を乱す。デリケートゾーンは「洗いすぎない」のが正解
正常なおりものとは
おりもの(帯下)は子宮頸部・膣の分泌物で、膣内を潤し、自浄作用によって雑菌の侵入を防ぐ重要な役割を持つ。正常なおりものの特徴は以下の通りだ。
- 透明〜乳白色(乾くと薄黄色になることがある)
- 無臭〜わずかに酸っぱいにおい(乳酸菌による)
- 月経周期で量・状態が変化(排卵期はよく伸びる透明なおりものが増える)
- かゆみ・痛みを伴わない
膣内は乳酸菌(デーデルライン桿菌)によって酸性(pH 3.8〜4.5)に保たれている。この酸性環境が雑菌の繁殖を防いでいる。膣の善玉菌バランスが崩れると、カンジダや細菌性膣症が起きやすくなる。
異常なおりもの——疾患別の特徴
| 疾患 | おりものの特徴 | その他の症状 |
|---|---|---|
| カンジダ膣炎 | 白く酒粕状・カッテージチーズ状。無臭〜軽い酸味 | 強いかゆみ・外陰部の発赤・ヒリヒリ感 |
| 細菌性膣症 | 灰色〜白色でサラサラ。魚のような生臭いにおい | かゆみは軽い。性交後ににおいが強くなる |
| トリコモナス膣炎 | 黄緑色で泡立つ・悪臭 | 強いかゆみ・排尿痛。性感染症の一つ |
| クラミジア・淋菌 | 黄色っぽいおりもの増加。無症状も多い | 下腹部痛・不正出血。性感染症 |
| 萎縮性膣炎 | 黄色っぽい・血が混じることも | 閉経後・授乳中の乾燥・性交痛 |
カンジダ膣炎——再発しやすい身近なトラブル
カンジダはもともと体内に存在する常在菌(真菌)だ。疲労・抗菌薬使用・妊娠・糖尿病・免疫低下などで膣内環境が乱れると異常増殖し、強いかゆみと特徴的なおりものを起こす。
- 性感染症ではない(性交がなくても発症する)
- 市販の膣錠・クリームもあるが、初めての場合は受診して診断を確定するのが安全
- 再発を繰り返す場合は糖尿病など背景疾患の確認が必要
細菌性膣症——「魚臭い」がサイン
細菌性膣症は膣内の乳酸菌が減り、代わりに他の細菌が増えることで起きる。性感染症ではないが、放置すると早産・PID・STI感染リスクの上昇につながる。
- 特徴は魚のような生臭いにおい(特に性交後・月経後に強くなる)
- かゆみは軽度なことが多い
- 治療はメトロニダゾール(内服または膣錠)
デリケートゾーンの正しいケア
「洗いすぎ」が最大の落とし穴
膣内をビデや石鹸で強く洗うと、善玉菌(乳酸菌)まで洗い流してしまい、かえって膣炎を起こしやすくなる。膣の内部は自浄作用があるため洗う必要はない。
- 外陰部はぬるま湯または低刺激の専用ソープで優しく洗う
- 膣の内部は洗わない(自浄作用に任せる)
- 通気性のよい綿の下着を選ぶ
- おりものシートは長時間つけっぱなしにせずこまめに替える
- 排便後は前から後ろへ拭く(大腸菌の侵入を防ぐ)
まとめ
おりものは女性の体の健康状態を映す鏡だ。「いつもと違う色・におい・かゆみ」に気づいたら、自己判断せず婦人科を受診してほしい。市販薬で対処する前に、まず原因を確定することが再発を防ぐ近道だ。そして「洗いすぎない」ことがデリケートゾーンケアの基本だと覚えておこう。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
- CDC. “Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021.” MMWR. 2021.
- Sobel JD. “Vulvovaginal candidosis.” Lancet. 2007.