▸ この記事のポイント
- PMS(月経前症候群)は身体症状+精神症状が月経前に現れて月経開始後に消える状態
- PMDD(月経前不快気分障害)はPMSの重症型。気分の著しい落ち込み・強いイライラ・不安が中心で、日常生活に重大な支障をきたす
- PMDDはDSM-5で独立した精神疾患として診断される。有病率は月経のある女性の3〜8%
- 「毎月同じ時期だけおかしくなる」は偶然ではなく、治療できる症状だ
PMS(月経前症候群)とは
PMSとは月経前(黄体期:排卵〜月経開始の5〜14日間)に現れ、月経開始後数日以内に消える身体的・精神的症状の総称だ。
症状が現れるためには以下の3条件が必要とされている。
- 症状が月経前5〜10日以内に現れ、月経開始後4日以内に消える
- 少なくとも連続する2〜3周期で症状が繰り返される
- 日常生活・仕事・人間関係に支障が出る
PMSの主な症状
| 身体症状 | 精神症状 |
|---|---|
| 乳房の張り・痛み | イライラ・怒りっぽくなる |
| 腹部膨満感 | 気分の落ち込み・憂うつ感 |
| 頭痛 | 不安感 |
| むくみ | 集中力の低下 |
| 食欲増加・過食 | 眠気・不眠 |
| 疲労感 | 引きこもりたい感覚 |
PMDD(月経前不快気分障害)とは
PMDDはPMSより重症で、精神症状が中心の疾患だ。DSM-5(精神疾患の診断統計マニュアル)に独立した疾患として掲載されている。
PMDDの診断基準(要約)
以下の症状群の中から5つ以上が月経前1週間に現れ、月経開始後数日以内に軽快し、月経後の週にはほぼ消える:
- 気分の著しい落ち込み・絶望感・自己批判的な思考
- 強い不安・緊張感・「カリカリしている」感覚
- 著しいイライラ・怒り・対人摩擦の増加
- 活動への興味の著しい減退
- 集中困難
- 易疲労感・著しいエネルギーの欠如
- 食欲の著しい変化
- 過眠または不眠
- 圧倒される感覚・コントロールを失う感覚
- 身体症状(乳房、頭痛、むくみ)
PMSとPMDDの最大の違いは「精神症状の重さ」だ。PMDDでは仕事を休む・パートナーや家族との関係が壊れそうになる・「死にたい」という気持ちが出てくるレベルの精神症状が現れる。「毎月このくらいが普通」と思わないでほしい。
自己評価——症状記録をつける
PMS/PMDDの診断には少なくとも2〜3か月間の症状日誌が重要だ。毎日記録することで「月経周期と症状の関連」を可視化できる。
- 毎日の気分・身体症状を10段階で記録する
- 月経開始日・終了日を記録する
- 「いつから症状が出始めて、いつ消えたか」を確認する
- 仕事・人間関係への影響を記録する
- 受診時にこの記録を持参する
PMSとうつ病・双極性障害の鑑別
PMDDは既存のうつ病・双極性障害の「月経前の悪化」と区別することが重要だ。月経後の1週間(卵胞期)に完全に症状が消えるなら、PMDD/PMSである可能性が高い。月経後も症状が続く場合は、うつ病・双極性障害の評価が必要だ。精神科や心療内科との連携が重要になることもある。
まとめ
PMS・PMDDは「月経がある女性だから仕方ない」ではなく、治療できる疾患だ。「毎月こんなにつらいのはおかしい」と感じたら、症状日誌をつけて婦人科に相談してほしい。適切な診断と治療で、毎月繰り返す苦しみから解放されることができる。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
- American Psychiatric Association. DSM-5. 2013.
- Yonkers KA, et al. “Premenstrual syndrome.” Lancet. 2008.