▸ この記事のポイント
- 卵巣がんは「沈黙のがん」と呼ばれ、早期(I期)では症状がほぼない。定期的な超音波検査が最も有効なスクリーニング手段
- CA125(腫瘍マーカー)は卵巣がん以外でも上昇する(子宮内膜症・月経中など)。単独では診断に使えない
- 卵巣がんの確定診断には手術が必要。超音波・MRI・CA125は「疑いの程度」を評価する参考
- BRCA1/2遺伝子変異を持つ家族がいる場合は遺伝カウンセリングと定期フォローが重要
卵巣がんが「沈黙のがん」と呼ばれる理由
卵巣がんは初期にはほとんど症状がなく、腹水・腹部膨満・体重変化などが出る頃にはすでにIII〜IV期に進行しているケースが多い。このため5年生存率が他の婦人科がんに比べて低く(約50%)、早期発見が特に重要だ。
日本では卵巣がんの罹患数は年々増加傾向にあり、40〜60代女性に多い。
経腟超音波検査——最も有効なスクリーニング
経腟超音波検査(エコー)は卵巣の大きさ・形・内部構造をリアルタイムで評価できる最も基本的な検査だ。
- 嚢胞の有無・大きさ・内部(液体のみか充実成分があるか)を評価
- カラードプラで血流パターンを確認(悪性の疑い度を上げる)
- 婦人科検診に含まれており、受ける機会が多い
「卵巣嚢胞を指摘された」は「がん」ではない。超音波で嚢胞が見つかっても、単純な液体だけの嚢胞は多くの場合良性だ。充実部分・隔壁・血流異常などがある場合に悪性の疑いが高まる。指摘されたら必ず婦人科でフォローを受けてほしい。
CA125(腫瘍マーカー)の正しい理解
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準値 | 35U/mL以下(施設により異なる) |
| 上昇する状態 | 卵巣がん・子宮内膜症・月経中・妊娠・肝疾患・その他のがん |
| スクリーニングとしての限界 | 早期卵巣がんでは正常範囲のことも多い。単独では診断不可 |
| 有用な使い方 | 治療効果の追跡・チョコレート嚢胞の活動性評価・術後再発モニタリング |
ハイリスクな人への特別な対応
以下に該当する場合は通常より積極的な検診・遺伝カウンセリングを勧める。
- 乳がん・卵巣がんの家族歴(特に母・姉妹・娘)
- BRCA1/2変異が家族に判明している
- リンチ症候群の家族歴
- 子宮内膜症(チョコレート嚢胞)がある
- 未産婦・排卵誘発薬の長期使用歴
BRCA検査について
BRCA1/2遺伝子変異を持つ女性は生涯で卵巣がんになるリスクが10〜40%(一般集団の約3〜4倍)に上昇する。遺伝カウンセリングで検査を受けるかどうかを相談できる。変異が確認された場合は婦人科でサーベイランス計画を立てることが推奨される。
まとめ
卵巣がんの決定的なスクリーニング法はまだ確立されていないが、定期的な超音波検査が最も現実的な早期発見手段だ。チョコレート嚢胞や卵巣嚢胞がある場合は特に定期フォローを続けてほしい。家族歴がある場合は遺伝カウンセリングへの相談も検討してほしい。
参考文献
- 日本婦人科腫瘍学会. 卵巣がん治療ガイドライン2020.
- 国立がん研究センター. 卵巣がんの予防・検診のエビデンス.
- Jacobs IJ, et al. “Ovarian cancer screening and mortality in the UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening (UKCTOCS).” Lancet. 2016.