▸ この記事のポイント
- 生理痛の主な原因はプロスタグランジンという物質。子宮を収縮させ経血を排出するために働くが、過剰産生されると強い痛みになる
- 鎮痛薬は「痛くなってから」より痛みが始まる前・始まった直後に飲むほうが効果が高い
- イブプロフェン系の市販薬がプロスタグランジンを抑える作用が強く、生理痛に向いている
- 「毎月寝込むほど痛い」「年々痛みが強くなっている」は子宮内膜症のサインかもしれない。我慢し続けないでほしい
生理痛の原因——プロスタグランジンとは何か
生理痛(月経困難症)の主な原因は、プロスタグランジンという生理活性物質だ。月経が始まるとき、子宮内膜が剥がれ落ちるのに伴い、このプロスタグランジンが大量に産生される。
プロスタグランジンには子宮を収縮させる働きがあり、経血を体外に排出するために必要な物質だ。しかし過剰に産生されると、子宮が強く収縮しすぎてしまい、強い下腹部痛・腰痛・吐き気・下痢などを引き起こす。これが生理痛のしくみだ。
プロスタグランジンは血流にも乗って全身に広がるため、頭痛・倦怠感・発熱感なども生理痛の症状として現れることがある。「生理になると体全体がだるくなる」のはこのためだ。
機能性と器質性——2種類の月経困難症
生理痛には、原因によって2つのタイプがある。
| 種類 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機能性月経困難症 | 子宮・卵巣に病気なし。プロスタグランジンの過剰産生 | 月経開始直前〜1〜2日目に強く、その後軽快。若い女性に多い |
| 器質性月経困難症 | 子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などの病気 | 年々悪化する。月経後半にも痛みが続く。性交痛・排便痛を伴うことがある |
若いころから強い生理痛がある場合、機能性と器質性が混在していることも多い。「昔から痛い」だけでなく「年々ひどくなっている」なら、器質性の可能性を考えて受診することを勧める。
鎮痛薬の正しい飲み方
市販の鎮痛薬は正しく使えばかなりの効果を発揮する。多くの人が「効かない」と感じるのは、飲むタイミングが遅いからだ。
タイミングが重要——早めに飲む理由
プロスタグランジンはいったん大量産生されてしまうと、薬が追いつきにくくなる。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はプロスタグランジンの産生を阻害する薬なので、産生が始まる前、または産生が少ない段階で飲むほうが効果が高い。
- 月経が始まりそうな予感(下腹部の重さ・腰のだるさ)がしたら飲む
- 月経が始まったら、まだ「我慢できる」段階でも飲む
- 痛みがひどくなってから飲むのは遅い
- 次の服用は用量の間隔(通常6〜8時間)を守る
市販薬の選び方
生理痛に使える市販鎮痛薬には主に2系統ある。
| 成分系統 | 代表的な市販薬 | 生理痛への特徴 |
|---|---|---|
| イブプロフェン系 | イブ、ナロン、バファリンプレミアム など | プロスタグランジン産生を直接抑制。生理痛に最も適している |
| アセトアミノフェン系 | タイレノール、ノーシン など | 鎮痛・解熱作用あり。胃への刺激が少ないが、生理痛への効果はやや劣る |
胃への注意
イブプロフェン系(NSAIDs)は空腹時に飲むと胃を荒らすことがある。軽食と一緒に飲む、または食後に飲むようにしよう。胃が弱い人はアセトアミノフェン系か、胃腸薬との併用を検討するとよい。
鎮痛薬で効果が不十分なとき
市販薬を正しく使っても効果が不十分な場合は、婦人科での処方薬を検討してほしい。処方薬には以下の選択肢がある。
低用量ピル(LEP)
生理痛の治療として最も効果的な選択肢の一つだ。子宮内膜を薄く保つことでプロスタグランジンの産生量自体を減らし、生理痛と出血量を同時に減らすことができる。子宮内膜症の進行抑制にも効果がある。
処方NSAIDs
ロキソプロフェン(ロキソニン)などの処方薬は、市販薬と比べて用量が最適化されており、効果が高い場合がある。
「ピル=避妊薬」ではない
低用量ピルは避妊目的だけでなく、月経困難症・子宮内膜症・過多月経の治療薬として保険適用で処方できる。「ピルは避妊のためだけ」というイメージが強いが、生理痛のつらい人は婦人科で相談してほしい。
こんな生理痛は受診のサイン
以下に当てはまる場合は、病気が隠れている可能性がある。放置すると不妊につながるケースもあるため、早めに婦人科を受診することを勧める。
- 鎮痛薬が効かない、または量が増えてきた
- 年々生理痛が強くなっている(これが最大のサイン)
- 月経3日目以降も痛みが続く、または悪化する
- 性交時に痛みがある
- 排便時に痛みがある(特に月経中)
- 骨盤・腰・太ももまで痛みが広がる
- 毎月鎮痛薬なしでは日常生活が送れない
- 不妊が心配
「年々痛みが強くなる」は子宮内膜症の典型的なサインだ。子宮内膜症は早期に発見・治療するほど不妊リスクを下げることができる。「生理痛は当たり前」と思って我慢し続けることで、治療のタイミングを逃してしまうケースが後を絶たない。
まとめ
生理痛は「体質だから仕方ない」ではなく、適切な対処で大幅に改善できる症状だ。まず鎮痛薬の飲み方(タイミング・薬の種類)を見直すだけで楽になるケースが多い。
一方で、年々悪化する痛みは病気のサインかもしれない。生理痛を「普通のこと」として放置せず、つらいと感じたら婦人科に相談してほしい。自分の体に正しい知識を持ち、適切に対処することが大切だ。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
- Marjoribanks J, et al. “Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for dysmenorrhoea.” Cochrane Database Syst Rev. 2015.
- Dawood MY. “Primary dysmenorrhea: advances in pathogenesis and management.” Obstet Gynecol. 2006.
- 日本子宮内膜症協会. 子宮内膜症診療ガイドライン2021.