▸ この記事のポイント
- 過多月経の定義は経血量140mL超/回。ナプキンを1〜2時間ごとに交換しなければならない状態が目安
- レバー状の血の塊は子宮筋腫・子宮腺筋症のサインである場合が多い
- 過多月経を放置すると鉄欠乏性貧血が進行する。「疲れやすい・息切れ」は貧血の可能性
- 治療は薬物療法(ピル・ミレーナ・鉄剤)から手術まで選択肢がある。妊娠希望の有無によって方針が変わる
過多月経の定義と「レバー状の塊」の意味
過多月経とは、1回の月経における経血量が140mLを超える状態だ。実際に量を測ることは難しいため、以下の目安で判断する。
- 昼間でもナプキンを1〜2時間ごとに交換しなければならない
- 夜用ナプキンでも一晩もたない日が続く
- レバー(肝臓)のような血の塊が繰り返し出る
- 生理中に外出・仕事が困難になる
- めまい・疲れやすさ・息切れが続く(貧血症状)
レバー状の塊は、経血が子宮内で凝固してから排出されたものだ。通常、子宮内膜や子宮から分泌される線溶酵素が凝固を防ぐが、出血量が多すぎると酵素が追いつかず塊が形成される。繰り返し出る場合は過多月経・子宮疾患のサインとして受診を勧める。
過多月経の主な原因
過多月経の原因はFIGOのPALM-COEINシステムで分類されるが、日常診療で多い主な原因を示す。
| 原因 | 特徴 | その他の症状 |
|---|---|---|
| 子宮筋腫 | 粘膜下筋腫で特に出血量が増える | 腹部膨満感、頻尿、腰痛 |
| 子宮腺筋症 | 子宮が大きくなり内膜面積が増大 | 強い生理痛(年々悪化) |
| 子宮内膜ポリープ | 子宮内膜に良性の突起ができる | 月経間の不正出血も多い |
| 排卵障害 | 無排卵周期でエストロゲンが優位になる | 月経不順を伴うことが多い |
| 血液凝固障害 | フォン・ヴィレブランド病など | 若年から続く、歯科処置後の止血困難 |
見逃せない:子宮体がんの可能性
40代以降の過多月経や不正出血は、子宮体がん(子宮内膜がん)の症状として現れることがある。特に閉経後の出血は必ず婦人科受診を。肥満・糖尿病・高血圧・未産がリスク因子となる。
過多月経と貧血の関係
毎月大量に出血すると、体内の鉄が失われ続け、鉄欠乏性貧血が生じる。貧血は徐々に進行するため「いつの間にか慢性的に貧血」という状態になりやすい。
貧血の主な症状:
- 疲れやすさ・倦怠感
- 動悸・息切れ(特に階段・運動時)
- 立ちくらみ・めまい
- 顔色が悪い・爪がもろい・髪が抜けやすい
- 氷を大量に食べたくなる(異食症)
「なんとなくずっと疲れている」は鉄欠乏性貧血のサインかもしれない。血液検査(Hb・フェリチン)で確認できる。フェリチンは貯蔵鉄を反映し、Hbが正常でもフェリチンが低い場合(潜在性鉄欠乏)は症状が出ることがある。
治療の選択肢
治療は原因・年齢・妊娠希望の有無によって選択が変わる。
薬物療法
| 治療 | 効果 | 特徴 |
|---|---|---|
| 低用量ピル(LEP) | 出血量を40〜60%減少 | 月経痛にも効果。妊娠希望なければ長期使用可 |
| ミレーナ(IUS) | 出血量を80〜90%減少 | 子宮内に挿入するホルモン付き器具。5年間有効 |
| トラネキサム酸 | 月経期間中の出血量を減らす | 月経中のみ服用。妊娠中も使用可能 |
| 鉄剤 | 貧血を改善 | 過多月経の直接治療ではなく貧血への対症療法 |
手術療法
- 子宮鏡下手術:ポリープや粘膜下筋腫を除去(子宮温存)
- 子宮筋腫核出術:筋腫だけを取り除く(妊娠希望のある場合)
- 子宮内膜焼灼術:子宮内膜を焼いて出血を減らす(妊娠希望なし)
- 子宮全摘術:根本的な治療だが妊娠不可。重症例や薬が効かない場合
まとめ
「生理の量が多いのは体質」と放置しているうちに、貧血が進行したり子宮疾患が悪化したりするケースは少なくない。過多月経は治療で改善できる症状だ。「ナプキンがすぐいっぱいになる」「レバー状の塊が毎月出る」という状態は、ぜひ婦人科に相談してほしい。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
- Munro MG, et al. “FIGO classification system (PALM-COEIN) for causes of abnormal uterine bleeding.” Int J Gynaecol Obstet. 2011.
- 国立病院機構. 子宮腺筋症・子宮筋腫診療ガイドライン.