性と健康

年齢とともに変わる膣と尿の悩み——GSMとフェムケア

▸ この記事のポイント

  • GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は、エストロゲン低下による膣の乾燥・萎縮・尿トラブルを総称した状態
  • ホットフラッシュと違い、GSMは時間が経っても自然に治らず、むしろ進行する。早めのケアが重要
  • 局所エストロゲン(膣錠・クリーム)は全身への影響が少なく、乳がん既往者でも相談の上で使えることが多い
  • 保湿剤・潤滑剤・骨盤底筋トレーニングなどのフェムケアで生活の質を保てる

GSMとは何か

GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)は、2014年に提唱された比較的新しい概念だ。それまで「萎縮性膣炎」「老人性膣炎」などと呼ばれていた症状を、膣だけでなく尿路の症状も含めて包括的にとらえたものだ。

閉経でエストロゲンが低下すると、膣・外陰・尿道・膀胱の組織が薄く・乾燥し、弾力を失う。これにより多彩な症状が現れる。

GSMの主な症状

領域 症状
膣・外陰 乾燥・かゆみ・ヒリヒリ感・灼熱感・性交痛・少量出血
尿路 頻尿・尿意切迫・排尿時痛・繰り返す膀胱炎
性機能 潤滑低下・性交痛・性的満足度の低下

GSMはホットフラッシュと決定的に異なる点がある。ホットフラッシュは閉経後数年で自然に軽快することが多いが、GSMは治療しないと進行し続ける。「年だから仕方ない」と諦めて放置すると、生活の質が徐々に低下してしまう。

治療——局所エストロゲンが中心

GSMの治療の中心は局所エストロゲン(膣に直接使うエストロゲン)だ。

  • 膣錠・膣クリームとして使用
  • 膣・尿路の組織を回復させ、症状を根本的に改善
  • 血中への吸収が少なく全身への影響が小さい
  • HRTの全身投与より低リスクで、長期使用が可能

乳がん既往がある場合

乳がんの既往がある女性でもGSMは起きる(特に乳がん治療薬の影響で悪化することがある)。局所エストロゲンは血中への移行が少ないため、腫瘍内科医と相談の上で慎重に使用できる場合がある。まずは非ホルモン性の保湿剤・潤滑剤から試すことが多い。自己判断せず主治医に相談してほしい。

セルフケアとフェムケア

医療的治療と並行して、以下のセルフケアが症状の緩和に役立つ。

  • 膣保湿剤:定期的に使う保湿ジェル(性交時以外も継続使用)
  • 潤滑剤:性交時の水性・シリコン性潤滑剤
  • 骨盤底筋トレーニング:尿トラブル・性機能の改善(ケーゲル体操)
  • 適度な性的活動:膣の血流維持に役立つ
  • 低刺激の洗浄:デリケートゾーンは洗いすぎず、専用の低刺激ソープで
  • 綿の通気性のよい下着:かゆみ・かぶれの予防

フェムテック・フェムケア製品との付き合い方

近年「フェムテック」「フェムケア」として膣保湿剤・潤滑剤・吸水ショーツ・骨盤底筋トレーニング機器などさまざまな製品が登場している。生活の質を上げる有用なものも多いが、選び方には注意が必要だ。

  • 膣内に使う製品はpH・成分に配慮した医療用・専用品を選ぶ
  • 「膣の引き締め」「デトックス」をうたう根拠不明の製品には注意
  • 症状が強い場合は製品任せにせず、まず婦人科で原因を確認する

まとめ

GSMは閉経後の多くの女性が経験する症状でありながら、「恥ずかしい」「年だから」と相談されにくい領域だ。しかし適切な治療とケアで生活の質を大きく改善できる。膣・尿の悩みは決して我慢するものではない。年齢を重ねても快適に過ごすために、婦人科で気軽に相談してほしい。

参考文献

  1. 日本女性医学学会. 女性医学ガイドブック 更年期医療編2019.
  2. The NAMS 2020 GSM position statement. Menopause. 2020.
  3. Portman DJ, et al. “Genitourinary syndrome of menopause: new terminology.” Menopause. 2014.

本記事は産婦人科専門医が監修した健康情報です。個々の医療判断は担当医師にご相談ください。本記事の内容は医療行為の代替となるものではありません。