▸ この記事のポイント
- 女性ホルモンの主役はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)。月経周期に合わせて変動する
- エストロゲンは骨・心血管・皮膚・脳に守護的な働きを持つ。閉経後に急低下することで多彩な症状が出る
- テストステロンは女性にも少量存在し、性欲・気力・筋肉量に関与する
- ホルモンバランスは「乱れる」というより「変動する」。その変動を理解することが体の不調を読み解く鍵だ
女性のホルモン調節システム
女性ホルモンは脳(視床下部・下垂体)と卵巣の3段階のシステムで調節されている(HPO軸:視床下部-下垂体-卵巣軸)。
- 視床下部がGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌
- 下垂体がFSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体化ホルモン)を分泌
- 卵巣がエストロゲン・プロゲステロンを分泌
この系は自律神経・ストレス・体重変化・免疫系などから影響を受けるため、生活習慣やストレスが月経周期に影響することがある。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
| 臓器・組織 | エストロゲンの働き |
|---|---|
| 子宮 | 子宮内膜を増殖・厚くする。子宮頸管粘液を精子が通りやすい状態にする |
| 骨 | 骨吸収を抑制し骨密度を維持する。閉経後に低下すると骨粗鬆症リスクが上昇 |
| 心血管 | HDL(善玉コレステロール)増加・LDL減少。動脈硬化を抑制する |
| 脳・神経 | セロトニン・ドーパミンに影響。気分の安定・認知機能に関与 |
| 皮膚・粘膜 | コラーゲン産生を助け、皮膚の弾力・保湿を維持。膣粘膜を保護 |
プロゲステロン(黄体ホルモン)
プロゲステロンは排卵後の黄体期に分泌が増加し、妊娠維持・体温上昇・子宮内膜の分泌期変化を担う。
- 子宮内膜の受精卵着床準備:増殖した内膜を分泌期に変化させる
- 体温上昇:基礎体温が0.2〜0.3℃上昇(排卵確認に使用)
- 乳腺発達:妊娠時の母乳産生の準備
- 子宮収縮抑制:妊娠中の子宮を弛緩状態に保つ
プロゲステロンは「PMSの原因ホルモン」ではない。PMS症状はプロゲステロンの絶対量より、その急激な変動(月経前の急低下)と個人差(脳の感受性の違い)が原因とされている。「プロゲステロンが多いと不調になる」という単純な理解は正しくない。
テストステロンと女性
テストステロンは男性ホルモンと思われがちだが、女性でも副腎と卵巣から少量産生される。女性の体における役割は以下の通りだ。
- 性欲・性的興奮に関与
- 気力・活力・競争心に関与
- 筋肉量・骨密度の維持に貢献
- 卵巣機能の一部を担う
過剰な場合(PCOS・先天性副腎過形成など):ニキビ・多毛・月経不順が起きる。
ライフステージ別のホルモン変化
| 時期 | ホルモンの状態 |
|---|---|
| 思春期 | エストロゲン急上昇。初経・乳房発育・体型変化 |
| 生殖年齢 | 月経周期に合わせた規則的な変動 |
| 妊娠 | hCG急上昇→エストロゲン・プロゲステロンが高値を持続 |
| 更年期 | エストロゲンが不規則に急変動した後、閉経とともに低下安定 |
| 閉経後 | エストロゲン低値が持続→骨・心血管・認知機能に影響 |
まとめ
女性ホルモンは単に月経を起こすだけでなく、骨・心臓・脳・皮膚など全身に多彩な影響を与えている。自分のホルモンの変動パターンを理解することで、体の不調を「ホルモンサイクルの一部」として捉えられるようになり、必要なケアを選択できる。
参考文献
- 日本女性医学学会. 女性医学ガイドブック2019.
- Speroff L, Fritz MA. “Clinical Gynecologic Endocrinology and Infertility.” 8th ed. 2011.