▸ この記事のポイント
- 子宮内膜症は子宮の外に子宮内膜様の組織ができる病気。生殖年齢女性の約10%に存在するとされる
- 主な症状は年々悪化する生理痛・性交痛・排便痛・不妊。「生理痛が強いだけ」と思って受診が遅れるケースが多い
- 早期に治療を始めるほど不妊リスクを下げられる。若い時期の長期管理が重要
- 薬物療法(ピル・GnRHアゴニスト)と手術療法(腹腔鏡手術)が主な治療選択肢
子宮内膜症とは
子宮の内側を覆っている子宮内膜と同様の組織が、子宮の外側(卵巣・骨盤腹膜・卵管・腸など)に発生・増殖する病気だ。
この異所性の組織も月経のたびに出血するが、出血が体外に排出されず病巣内に溜まる。これが炎症・癒着・線維化を引き起こし、様々な症状と不妊の原因になる。
卵巣に血液が溜まったものがチョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)で、古い血液が変性してチョコレートのような色になることからこの名前がついた。
主な症状
子宮内膜症の症状は発生部位によって異なるが、最も重要なのは「年々悪化していく」という経過だ。
- 生理痛(月経困難症)——年ごとに痛みが強くなる
- 性交痛——深い部位の痛み(深部性交痛)が特徴
- 排便痛・排尿痛(特に月経中)
- 骨盤慢性痛——月経と無関係な骨盤痛が持続する
- 過多月経
- 不妊——子宮内膜症患者の30〜50%に不妊が合併する
症状の強さと病気の重さは必ずしも一致しない。軽度の子宮内膜症でも不妊を引き起こすことがある一方、チョコレート嚢胞が大きくても痛みが軽い場合もある。症状だけで判断せず、超音波検査での確認が重要だ。
診断方法
子宮内膜症の確定診断は腹腔鏡手術による組織確認だが、日常診療では以下の検査で診断することが多い。
| 検査 | 分かること | 特徴 |
|---|---|---|
| 経腟超音波 | チョコレート嚢胞の有無・大きさ | 簡便。骨盤腹膜病巣は見えにくい |
| MRI | 深部子宮内膜症・癒着範囲 | 深部病変の評価に優れる |
| CA125(腫瘍マーカー) | 活動性の参考 | 特異度が低く診断には使いにくい。経過観察に使用 |
| 腹腔鏡手術 | 確定診断・治療を同時に | ゴールドスタンダードだが侵襲的 |
治療の選択肢
子宮内膜症は閉経まで再発しやすいため、長期的な管理が必要だ。妊娠希望の有無によって治療方針が変わる。
薬物療法(妊娠希望がない・または妊娠前の管理)
- 低用量ピル(LEP):月経を抑制し病巣の進行を抑える。長期使用が基本
- プロゲスチン製剤(ジエノゲスト):子宮内膜症への直接効果が強い。保険適用
- GnRHアゴニスト(点鼻薬・注射):卵巣機能を一時的に停止させ閉経様状態にする。骨密度低下のため通常6か月以内
手術療法
- 腹腔鏡下卵巣嚢胞摘出術:チョコレート嚢胞を切除。妊娠希望例に適する
- 病巣焼灼・剥離:骨盤腹膜病巣を除去
- 根治手術(子宮全摘+両側附属器切除):重症・再発例で妊娠希望なしの場合
妊娠希望がある場合
子宮内膜症と不妊は密接に関連する。チョコレート嚢胞のある場合は手術後に妊娠率が上昇することがあるが、手術自体が卵巣機能を低下させるリスクもある。妊娠希望がある場合は、早めに不妊専門クリニックと連携した治療計画を立てることを勧める。
まとめ
子宮内膜症は「ありふれた病気」だが、放置すると不妊・慢性疼痛・QOL低下に直結する。「生理痛がひどい」「年々痛みが増している」と感じたら、我慢せずに婦人科を受診してほしい。早期発見・早期治療が将来の妊孕性を守ることにもつながる。
参考文献
- 日本子宮内膜症協会. 子宮内膜症診療ガイドライン2021.
- ESHRE guideline: management of women with endometriosis. Hum Reprod. 2022.
- Giudice LC. “Endometriosis.” N Engl J Med. 2010.