性と健康

性交痛の原因と対処法——我慢しないための知識

▸ この記事のポイント

  • 性交痛は痛む場所(入口か奥か)で原因が異なる。入口の痛みは乾燥・感染・骨盤底筋、奥の痛みは子宮内膜症など
  • 「痛いのは当たり前」「相手に悪いから我慢する」は禁物。痛みの放置は悪循環を招く
  • 授乳中・更年期はエストロゲン低下による膣の乾燥が原因のことが多い。潤滑剤・局所エストロゲンで改善できる
  • 心理的要因・過去のトラウマが関与することもあり、その場合は専門的なサポートが有効

性交痛(ディスパレウニア)とは

性交時または性交後に感じる持続的・反復的な痛みを性交痛(ディスパレウニア)という。女性の多くが一生のうち一度は経験するとされ、決して珍しくない。

痛みの「場所」によって原因の見当がつくため、まずは入口(浅い部分)の痛みか、奥(深い部分)の痛みかを意識することが重要だ。

痛む場所別の原因

場所 主な原因
入口・浅い部分 膣の乾燥(潤い不足)、カンジダ・細菌性膣症、外陰部の炎症・湿疹、骨盤底筋の過緊張、会陰切開の瘢痕、膣けいれん
奥・深い部分 子宮内膜症・子宮腺筋症、骨盤内炎症(PID)、卵巣嚢胞、子宮位置異常(後屈)
全体・心理 緊張・不安・過去のつらい経験、パートナーとの関係性

膣の乾燥——最も多い原因の一つ

性交痛の原因として非常に多いのが膣の乾燥だ。エストロゲンが膣の潤いを保つため、エストロゲンが低下する状況で乾燥が起きやすい。

  • 授乳中:プロラクチン上昇+エストロゲン低下で膣が乾燥
  • 更年期・閉経後:GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)による膣萎縮
  • 前戯不足・緊張:自然な潤滑が不十分な状態

乾燥への対処

水性の潤滑ゼリーの使用が手軽で効果的。更年期・授乳中の膣萎縮には局所エストロゲン(膣錠・クリーム)が有効で、全身への影響が少なく安全性が高い。十分な前戯で自然な潤滑を促すことも大切だ。

骨盤底筋の過緊張・膣けいれん

痛みへの恐怖・緊張から骨盤底筋が反射的に収縮し、挿入時に強い痛みやけいれんを起こすことがある。「痛い→緊張→さらに痛い」という悪循環に陥りやすい。

  • 骨盤底筋を意識的に緩める練習(リラクゼーション)
  • ウィメンズヘルス理学療法士による専門的アプローチ
  • 段階的な脱感作(ダイレーターの使用など)

「痛みを我慢して続ける」ことは最も避けるべき対応だ。痛みを我慢すると骨盤底筋の過緊張が強まり、性交痛が慢性化する。痛みがあるときは中断し、原因を探ることが回復への近道だ。

受診の目安と治療

以下の場合は婦人科の受診を勧める。

  • 性交のたびに痛みがある
  • 潤滑剤を使っても痛む
  • 奥が痛い・性交後に下腹部痛が続く(子宮内膜症の可能性)
  • 出血を伴う
  • 痛みのために性交が困難・回避するようになった

原因に応じて、局所エストロゲン・潤滑剤・感染症治療・子宮内膜症治療・骨盤底筋療法・心理的サポートなどが行われる。

まとめ

性交痛は「気のせい」でも「我慢すべきもの」でもなく、明確な原因がある治療できる症状だ。原因は乾燥から子宮内膜症、心理的要因まで多岐にわたる。一人で抱え込まず、パートナーと共有しながら婦人科に相談してほしい。適切な対処で多くの場合改善できる。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023.
  2. ACOG Practice Bulletin. “Female Sexual Dysfunction.” Obstet Gynecol. 2019.
  3. The NAMS position statement on GSM. Menopause. 2020.

本記事は産婦人科専門医が監修した健康情報です。個々の医療判断は担当医師にご相談ください。本記事の内容は医療行為の代替となるものではありません。