産後・育児

授乳と月経——再開の時期と避妊の注意点

▸ この記事のポイント

  • 授乳中はプロラクチン(授乳ホルモン)が月経を抑制する。完全母乳なら産後6か月程度は月経が来ないことが多い
  • 「授乳中は妊娠しない」は誤り。月経が来る前に排卵が起きるため、授乳中でも妊娠する可能性がある
  • 産後の避妊はコンドーム・ミニピル(プロゲスチン単独ピル)・ミレーナが主な選択肢
  • 月経再開後の最初の数周期は排卵のタイミングが不規則になることが多い

授乳と月経の関係——プロラクチンの役割

授乳中は脳下垂体からプロラクチン(授乳ホルモン)が分泌される。プロラクチンは母乳の産生を促進すると同時に、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌を抑制することで排卵を抑える。

このため授乳中は月経が来ないことが多いが、プロラクチンの分泌量は授乳の頻度・量・夜間授乳の有無によって異なる。混合栄養(母乳+ミルク)や夜間授乳をやめると早めに月経が再開する場合がある。

月経再開の目安

授乳状況 月経再開の目安
完全母乳(頻回授乳) 産後6〜12か月(6か月以降は個人差が大きい)
混合栄養 産後2〜4か月(ミルクの割合が増えるほど早まる)
完全人工乳(ミルクのみ) 産後4〜8週間

「月経が来ていないから避妊しなくていい」は間違いだ。排卵は月経より2週間前に起きる。つまり月経が来る前にすでに排卵しており、そこで妊娠することがある。授乳中でも性交をする場合は必ず避妊が必要だ。

産後の避妊方法

避妊法 授乳への影響 特徴
コンドーム 影響なし STI予防も兼ねる。産後すぐから使用可
ミニピル(プロゲスチン単独ピル) 影響なし〜軽微 エストロゲンを含まないため授乳中使用可。産後6週以降から
ミレーナ(IUS) 影響なし 産後6週以降から挿入可。5年間有効。過多月経にも
銅付加IUD 影響なし 産後6週以降から挿入可。ホルモンなし
低用量ピル(OC/LEP) 母乳量が減る可能性 エストロゲン含有のため、授乳中は推奨されない

月経再開後の変化

産後の月経再開後は、以前と異なる場合がある。

  • 最初の1〜3周期は排卵のタイミングが不規則
  • 出血量・月経期間が産前と変わることがある
  • 月経痛が改善するケースも多い(出産で子宮口が開きやすくなる)
  • 子宮内膜症があった人は産後に症状が改善することもある

産後の次の妊娠を考えるタイミング

帝王切開後は子宮の傷が回復するまで少なくとも18か月(できれば2年以上)の間隔をあけることが推奨される。経膣分娩後は12か月以上の間隔が理想とされる。産後の妊娠計画については1か月健診時に産婦人科医に相談してほしい。

まとめ

授乳中は月経が来なくても妊娠する可能性があることを必ず覚えておいてほしい。産後の性生活再開に合わせて、自分に合った避妊方法を婦人科で相談することを勧める。コンドーム・ミニピル・ミレーナのいずれも授乳中に使用できる安全な選択肢だ。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023.
  2. WHO. “Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, 5th edition.” 2015.
  3. Labbok MH, et al. “Lactational amenorrhea method.” Int Fam Plan Perspect. 1997.

本記事は産婦人科専門医が監修した健康情報です。個々の医療判断は担当医師にご相談ください。本記事の内容は医療行為の代替となるものではありません。